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『シーモアさんと、大人のための人生入門』トークショー

89歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインの生き様を描いたイーサン・ホーク監督作『シーモアさんと、大人のための人生入門』が10月1(土)よりシネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほかにて公開となった。映画の公開を記念し、初日のシネスイッチ銀座にて、ニューヨークでシーモアさんに師事されていた大木裕子氏から、シーモアさんから実際に教わったこと・学んだこと、そしてシーモアさんの人となりなどについていくつかのキーワードに沿って、トークショーが行われた。

 

 

◇お偉い先生

 

40才のとき、主人の転勤でニューヨークに行ったのですが、「とても素晴らしい先生がいるから紹介したい」と知人に言われたんですよ。その時に“ニューヨークのお偉い先生”と聞いて、「うーん」と躊躇していたんです。私が学生だったら是非“ニューヨークのお偉い先生”に見ていただきたいけど、そのそもそも“お偉い先生”というか、“先生”という人種があまり好きではなかったので…(笑) でもある日シーモア先生の本を読んでみたら、目次に「演奏会の当日に何を食べるか?」という項目があって、面白い方だなと思うとともに、「演奏を人に見せてやろう」と考える方ではないんだと思い、先生にお会いしたんです。 映画の中で現在もシーモアさんに師事されている市川純子さんも言っていましたが、音楽で話をしたら、シーモアさんにひとめぼれしました。

 

◇なぜできないか、ではなく、なぜできたのか

 

ある時先生が「長い間教師をしているけど、一番古い弟子の発言にすごくショックをうけた」とおっしゃったんです。 どうやらその方は「「演奏会にむけて練習するとき、うまくできたところではなく、できないところを一生懸命練習する」とおっしゃったそうで、先生が私に「まさか君もそんな風に練習しているんじゃないよね?」と聞かれたんです。  それで「どちらかというとわたしもそうです」と先生に言ったら、「できないことはもちろん勉強しなくてはならないけれど、そればかりやるのは違う。まずは、上手くできたことを”なぜできたのか”と分析しなければいけない。そうすれば、例えば演奏会で緊張で頭の中が真っ白になってしまっても、”こうすればうまくいく”とわかっていれば、なんとかなる。上手く演奏できると自分自身に歓びがある。まずはそれが大切だ」と言われたんです。

 

◇仕事の結果が出るためにする準備の仕方

 

「100万回練習してもうまくいくとは限らない。まずはイメージを持ちなさい。では、そのイメージをどうすれば実現できるか?」と先生は言うんです。 ピアノの練習で言うと、普段わたしたちは出来ないところをひとつずつクリアしていき、全部クリアしたら曲が出来上がり弾けるようになったと思ってしまう。 もちろん学校を卒業するまではそういった練習も必要ですが、一人前と言われ人前で弾くようになったときには、そうではないんです。 自分がどれだけ曲に感動しているか。そしてそれを人に伝える。その技術を持つことが目的なんです。命題をクリアするより、とにかく練習や準備をする場合に、できない所ができるようにと考えるのではなく、そ自分がどう考えるかが重要。 他人にジャッジされながら弾くのではなく、弾いている自分が感動している、それを聴いている人にもシェアしたい、というのがシーモア先生の基本姿勢なんです。そのような心持ちでいるほうが良いですよね。

 

◇NY中の犬と握手

 

先生はとにかく動物好きで、かわいい動物の画像を見つけると生徒たちにメールで送ったりしているそうなんですが、マンハッタンでツンとした犬が散歩していても、すぐに手を差し伸べるんです。「シーモア先生の大切な手が噛まれたら大変!」とお弟子さんが注意するのですが、先生は全く気にしていないどころか、絶対この犬は噛まないと感じている。私の考えでは、先生は本能的に相手のことが分かっているんだろうと思っています。先生が毎夏過ごすメイン州のお家の周りには野生の動物がたくさんいるんですが、普通なつかないようなリスやアライグマなんかが、みんな先生の元によってくるんです。しまいには、シーモアがピアノを弾くと動物たちが寄ってくるようになったとか(笑)

 

 

『シーモアさんと、大人のための人生入門』はシネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか絶賛上映中。