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第3回 プロとしてのインタビュアー

フリーライター 佐藤友紀 × 字幕翻訳家 菊地浩司

インタビューのコツ

菊地

ここまでお話を聞いてくると、インタビューって、相手のことを聞いて相手のことを紹介するものに見えるけれども、実は相手を素材にして、自分が何か表現しているんじゃないかなって僕は思い始めてきました。

 

佐藤

うーん。バランスでしょうね。

それをやりすぎちゃうと嫌う人もいる。だから相手の望む状態がどれくらいかにもよるんですよね。
例えば、歌舞伎役者の方に、知ったかぶりをして歌舞伎のことをああだこうだ言っても、「じゃあ僕に話を聞く必要ないじゃない」ってことになってしまうわけです。

 

菊地

戸田さんが、佐藤さんはインタビューのとき、ものすごく勉強してくるって言ってたけど、それは自分の聞こうとすることに対しての勉強?

 

佐藤

うーん。勉強しないと聞きたいことが出てこないんですよ。

だから映画だったら、その人が作ったものを観るのは最低条件。

今もそうなんですけど、ある程度シナリオは作りますよ。聞く内容とか。

でも誤解しちゃいけないのは、作って忘れるのがコツなんです。

往々にしてシナリオを作っちゃうと、せっかくいい寄り道をしても、自分の質問が気になって、「さっきのことですが」って戻っちゃう人がいるみたいだけど。

 

菊地

あー、いるね。

 

佐藤

それはすっごくもったいないと思うんですよ。

私の場合、もし欠点があるとしたら、あまり読者のことや雑誌のことを考えてないというのがあると思いますよ、正直言って。

 

菊地

でも、佐藤さんの文章をいくつか読ませてもらいましたけど、軽快だし、相手にわかりやすいし、だけど中身がしっかりしてるから、読んでて全然飽きないしね。あの文章すごい、素晴らしいと思うんだよ。

 

佐藤

あらー、ありがとうございます!

これは『シュレック2』(※1)のときにアントニオ・バンデラスが言ってたんですけど、あの猫の声の役だけで、世界を巡業して3千何個もインタビュー受けてるんですって。

それだけインタビューを受けると、聞き飽きた質問は山のようにあるわけですけど、一方でインタビューする側としては“押さえておきたい基本的な質問”がある。

でも私は、基本は押さえなくてもいいと思ってるんです。雑誌社からのオファーで、基本を、と言われた場合でも違う切り口で質問します。投げる球が違って、行き着き方が違えば、出てくるものも違いますから。

 

菊地

なるほどね。ところでインタビューの相手が大物で時間が短いほどプレッシャーがあると思うけど…。

 

佐藤

以前、戸田さんが通訳で、私がダスティン・ホフマンのインタビューをしたことがあるんですが、私も戸田さんもダスティン・ホフマンに会うのは初めてで。なぜか3人全員緊張してたの。

あのダスティンが、あの戸田さんが緊張してる! って思ったんですけど、真面目にやってたら当然ですよね。緊張するのは当たり前。
そこから打ち解けていく過程って必要だと思いました。だから緊張しててもいいんだな、必要なんだなって。

それに、私たちは原稿を書くときに、インタビューテープを起こしてもう一度追体験するわけですね。その時に、「なんで、この時突っ込んで聞かなかったんだろう」とか復習になるんですよ。

 

菊地

そうか、いろんなものを楽しめないといけないのか。

 

佐藤

そうですね。でも私差別主義者なんです(笑)。話の面白い人しか聞きたくないですから(笑)。

 

(一同爆笑)

 

菊地

わがままなインタビュアーだなぁ。

 

インタビュアーとしての原点

第3回 プロとしてのインタビュアー

佐藤

今思うと、私のインタビューの原点は20年くらい前、演劇の神様・ピーター・ブルックにインタビューした時。当時ある雑誌で演劇のコラムを書いていて、オペラ『カルメンの悲劇』でピーター・ブルック(※2)が来日したんですね。

で、演劇の神様だってことは知ってたんですが、どういう神様かそこまで詳しく知らなかったので、素の自分を出すしかないなと思っていました。

そこで女性誌によくありがちな女性観を尋ねる質問で、「あなたはカルメンのような女性と、ミカエラのような女性とどっちが好きですか?」って聞いたの。そ したらテディ・ベアみたいな顔して、「女性にはカルメンみたいな女性とか、ミカエラみたいな女性とか決まったパーソナリティはないんですよ。だから誰がカ ルメンを演じるかによって、そのカルメン像は変わってくるんです」っておっしゃって。

 

菊地

なるほど。

 

佐藤

最後にサインを貰った時に、「カルメンでもミカエラでもない、ユキその人に」って書いてくれて、感激しましたね。

2回目のインタビューの時も「ライブっていうものはすごくいいもの見ると、舞台から愛を感じると同時に、不安になる。何も返してあげられないっていう不安がある」っていう話を私がしたら、

「あなたは、例えば僕の舞台をパリでやっていると聞いたら、旅行代理店で飛行機を調べたりして、わざわざ見に来るでしょう? そこからあなたの愛は始まってるんですよ」って。

 

菊地

かっこいい〜!

 

佐藤

「例えば舞台を見て、何もないところで、役者がドアを開ける。そこにはあなたにドアが見えるでしょう? 役者が花を拾う。そこに白いバラが見えるでしょ う? それもあなたの愛です。あなたの愛がなかったら僕たちの作品は成立しないんです。交換なんですよ。」って言われたんです。

その時に「あ、交換なんだ。」て思ったわけです。一方的に受け入れるんじゃない。

だから、私は“見巧者”、すごく一生懸命見る人になろうって思った、それが大原点です。

だから、インタビューも、一生懸命“見る”。そうすると向こうが伝えたがってる事が浮き上がってきて、そこを質問すると凄く喜んでくれるんですね。

人とのつながりが幸運を呼ぶ

菊地

ところで最近、特に女性の若い人は、インタビューの仕事したいって人が多い気がするんだけど、どうしてなんだろう?

 

佐藤

端的に言うと、華やかで若干知的にも見えて、有名人と対等に話ができるからじゃないかしら。試験があるわけでもないし、なろうと思えばなれちゃうかも知れないし。

 

菊地

でもそれが生活につながるとは限らないでしょ?

 

佐藤

そうですね。私の場合は、人に恵まれたと思います。それに戸田さんや、川喜多さんや、ジョニー・デップや、私を助けてバックアップしてくれた人は皆、人を肩書きで見ない人が多いんですよ。

ケイト・ブランシェットも、スターとしていようと思えばいられるんだけど、1対1で会う時は、そういう肩書きを平気で外してくれる。外すって認識もないくらい。そういうニュートラルな部分を持っている人はかっこいいですしね。

個体で、単体で見てくれる。私も絶対そうしたいと思うんですけど、そういう人たちとお付き合いできたことが一番ラッキーだったかな。

用語解説

※1―――映画『シュレック2』SHREK2(2004)
緑色の心優しき怪物シュレックとその周辺に巻き起こる騒動を描いた、大人気アニメシリーズの第2作。豪華声優陣も話題のひとつで、マイク・マイヤーズ、エディ・マーフィ、キャメロン・ディアスのほか、アントニオ・バンデラスが長ぐつをはいたネコの声を演じている。現在「シュレック3」が日本公開中。

 

※2―――ピーター・ブルック Peter Brook(1925〜)
イギリス・ロンドン生まれの演出家。20歳のとき、現ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに最年少招待演出家として迎えられ、以降輝かしいキャリアを経て、世界的演出家としての地位を不動のものとした。

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