●フリーライター 佐藤友紀

●字幕翻訳家 菊地浩司


 

●フリーライター 佐藤友紀 第4回 ずっと現場で!

2007.09.11


【映画ジャーナリズムの今】

菊地:
人との繋がりは大事だし、運も必要だけど、やっぱりインタビュアーは特殊技能ですよね?

佐藤:
そう考えたいですね。
今すごく乱れていて、例えばグループインタビューでも、独占インタビューってしてしまう場合があるんですよ。
見てわかりますけど、同じような答えが出てくるのは独占じゃないからなの。
編集部が、うちだけがやってるように書いてくださいって言うのね。

菊地:
確かに最近は雑誌でもテレビでもメディアの伝える情報が何処もおんなじって感じが強くなってるよね。

佐藤:
私は死ぬほど抵抗するし、絶対やらないんだけど、もしやらなきゃいけない時でも、「外国のジャーナリストのこの質問には…」って、テクニックを使ってそこにちゃんと他社がいることを明らかにしておく。でないと気持ち悪いんですよ。
そういうところが今、日本の映画ジャーナリスト界ってモラルがすごく低くなってる気がします。私はデフレスパイラルって呼んでるんですけど。

【海外は旅慣れないほうが楽しい】

菊地:
仕事で海外に行くことも多いと思うけど、海外旅行で面白かった話とかはありますか?

佐藤:
山田詠美(※1)さんとも意見が一致したんですけど、旅慣れないと楽しいんですよ。かっこつけると、旅慣れた風を装いたがるじゃないですか。
でもそういうのはちっとも楽しくないと思うし、非日常だから面白い。一人旅が多いから気をつけてるところは気をつけていますけどね。だから、実際は怖い目にあったことはないんです。

菊地:
そうか、旅慣れないと楽しい。

佐藤:
だってそこで出会う出来事って一期一会でしょ? そう考えると愛しいですよね。
だからどこが好きですかって言われると「全部」みたいなね(笑)。
イヤなことあったとしても「次はどうだ! 敗者復活だぞ!」って…。
私の場合、食べ物が何でも好きだし苦手なものがないっていうのもあると思います。


【映画を“語る”】

菊地:
映画といえば、特に好きな映画はありますか?

佐藤:
私が一番映画館で多く見たのは『ウエスト・サイド・ストーリー』(※2)かな。それが舞台好きに反映しちゃったんだと思うんです。

菊地:
どういうところが好きなんですか?

佐藤:
やっぱり興奮しますよね。
私踊る外国人好きなんです。みんながシャーク団っていうところを、私はジェット団派! 一番若いベビー・ジョンが好きで。ダンスがうまいなぁと
思っていたら、数年前に“ウエスト・サイド・ストーリー40周年記念”で、ベビー・ジョンをやったエリオット・フェルド(※3)がバレエ団を作ったんです。それで、エリオット・フェルドの取材に行ったんですけどやっぱり当時の面影があって。ついにそこで青春を完結したのかなって思いました。

菊地:
そういえば最近こうやって映画を語ることがなくなったよね。

佐藤:
たしかに。
カルチャーセンターで3ヶ月に1回くらい与太話をする機会があるんですけど、そこにいらしてた方が「昔は映画を好きなもの同士が喫茶店に集まってしゃべるってことがよくあったけど、最近なくてさびしい」っておっしゃってましたよ。確かに、淀川先生の“東京映画友の会”(※3)とか、永六輔さんとかいらして、昔はそういうことが盛んだったなあと思いましたけど。

菊地:
「きゃーっ」て騒ぐのはあるけど、“語る”ってことがね。

佐藤:
そうですね。たぶん私のやらないネットとかでやってるのかも知れないんだけど。

菊地:
それも映画を語るって感じじゃないんだよな。“コメント”で、“評論”じゃない。

佐藤:
わかる気がします。

【一生現役!】

菊地:
今後の夢はありますか?

佐藤:
これも、インタビューのパクリなんだけど、『タイタニック』の前にレオナルド・ディカプリオがインタビューで、「僕はこの後、すごく上げられて、ストンと落とされるだろう。でも僕は絶対負けない。一日でも長く役者っていう仕事をしてやる」って言ってたの。
私も、本当に「少しでも長くいさせて。現役でいさせて!」っていうのはあります。現場にい続けたいですね。

菊地:
現場は面白いしね。

佐藤:
そう! 例えば、映画祭とかで若い俳優さんを見ると、特に男優で「この子は出てくる」っていうのは目に飛び込んでくるのね。100%分かるんです!
けっこう当たるんですよ。オーランド・ブルームも、「来るっ!」てずっと言い続けて。

菊地:
俺も、ニコール・キッドマンは、『デッド・カーム 戦慄の航海』で「絶対来る!」って思ってたら本当に来たしね。

佐藤:
そういうのってすごく嬉しいよね? 誰も何もくれないんだけど(笑)。

菊地:
やっぱり現場にいなくちゃね。

佐藤:
そうです!
(インタビュー終わり)



----------------------用語解説----------------------

1―――山田詠美(1959〜)
東京都出身の作家。1987年、「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」で直木賞を受賞。谷崎潤一郎賞を獲得した「風味絶佳」は最近、柳楽優弥、沢尻エリカ出演で映画化された。

※2―――映画『ウエスト・サイド物語』WEST SIDE STORY(1961年)
ブロードウェーミュージカルの映画化。圧倒的な歌と踊りで、今なお語り継がれる名作中の名作。対立する2つのグループ(白人系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団)にそれぞれ属する男女の恋愛と悲劇を描いた青春物語。
*インタビューの中にある、佐藤さんとエリオット・フェルドの対談は、『ウエスト・サイド物語』40周年記念デジタル・リマスター版リバイバル上映の際のパンフレットに記事が掲載されています! (宮本亜門さんとの対談の記事もあります。)

3―――エリオット・フェルド Eliot Feld
 『ウエスト・サイド物語』でジェット団のベビー・ジョンを演じ、現在は“バレエ・テック”というバレエ団を主宰。100以上の振付作品を生み出している。

※4―――東京映画友の会
 映画評論家の故・淀川長治氏が1948年に創設した映画ファンの会。


★ellyとnollyの編集後記★

インタビューは、どんどん楽しいお話が飛び出して、当初の予定をはるかに上回り、なんとトータル約2時間に及びました。

E:
やっと原稿終わった! どれもこれも楽しいエピソードばかりで、まとめるのに時間がかかってしまいました…。

N:
ほんとにすごい情報量だった! 何年に、誰が、どこで、どんなことを発言したか、全部頭に入ってらして、それが次から次へと出て来るんだもん。

E:
Cozyさんもびっくり。

N:
でも、お部屋は“樹海”っておっしゃってましたね。「散らかっているから、大事なものは目立つようにして郵送してください」と(笑)。

E:
こう言ったら失礼かもしれないけど、お茶目な方でしたね。とてもとてもいい方でした。

N:
感動的なお話も多くて…。

E:
そうなの! 原稿を作っているときにまさしく“追体験”をしたんだけど、特にピーター・ブルックについてのくだりの時は、入り込んでしまって泣きそうになってしまった…。

N:
そこまで入り込んでいたのね。だから他の原稿チェック頼んだのに、聞こえてなかったんだ…。

E:
う、いや、あの…すみませんでした!

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